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第45話 桐生への反省

菫と朝倉が席を立ち姿が見えなくなっても、気分は落ち込み、心あらずのまま帰宅しそのままシャワーを互いに浴びて床についた。 「……明日旅行行くんだろ。そんなに落ち込むな」 寝床について毛布に包まれながら背を向けて寝る自分に、桐生は後ろで溜息をついた。 「ごめん、せっかく自分から誘ったのに……。料理美味しかった」 もそもそと毛布越しに呟いて、不甲斐ない自分にも呆れた。 楽しみにしていた旅行も行きたくない。 「どうせ会えるんだろ、元気だせ」 明日会えても恋人の代わりに宿の感想を述べなければならない。 菫は今日あのホテルに泊まっていくと言っていたので、あの後二人とも今もあのホテルにいるのだろう。 嬉しそうに楽しげに話す二人を横目に見ながら、心底朝倉が羨ましくなり胸が痛かった。 自分は運の悪いことに菫の選んだ服を着て、恋人の後ろで食事しなければならないのだろう。 笑えた。 自分の惨めさと安直さに 「……桐生、今日までありがとう。色々助かった。桐生がいないと……俺ダメだったかも」 振り返って桐生に今日までの感謝を伝えようとした。 しかし桐生はいつの間にかすぐ背後まで、近づいて顎を掴み、そのまま深く口づけた。 薄く開いた唇からは舌が侵入して、口腔内を蹂躙に蠢いて悦楽を貪ろうとしていた。 「……ッ、……んんっ……!」 突然の事で眼を見開いて、身体を押し退けようとするが体重をかけてのし上がってきた。 「そう言うなら、俺を利用しろよ。どうせ、最後なんだ……嫌なら、抵抗してくれ」 桐生は困ったような悲しげな表情で、皐月にもう一度キスすると泣きそうになった。 今頃、菫は朝倉をあのホテルの何処かで抱いてるのだろうか。 キスされながら、頬に垂れる唾液を感じながら、明日またあの朝倉に向けた同じ笑顔で一日傍に居るのかと想像すると辛かった。 風邪を引いてからあまりにも感傷的に浸りすぎて、思考が停止し考えるのを諦めた。 桐生の身体の重さが何故か心地良い。 「いいよ。桐生、しよ」 皐月は腕を桐生の太い首に巻き付けるように回し、桐生の顔を引き寄せ激しく舌を這わせた。 その日、桐生を利用して激しく求められるように抱かれた。

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