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第48話 旅先と出発
お互いの中間地点である待ち合わせ場所の主要駅から特急列車に揺られ、40分程で宿に着いた。宿は緑の多い敷地の中に佇んでおり、ロビーにはテラスもあり森の中に包まれた癒しの空間があった。
チェックインをして部屋に着くなり、窓一面に湯が溢れて浴槽から流れて落ちる内風呂が見えた。そしてそこから見える山々は見晴らしがよく、とても綺麗だった。
「とっても景色が綺麗ですね。……けど、宿泊券頂いたとしても本当にこんな素敵な部屋大丈夫ですか…?」
そう言って外にある内風呂から流れる湯を見ながら、あまりにも広い室内に疑問を抱いた。
奥にも広い寝室があり、どう見ても特別仕様の室内は値段が一般的じゃない気がした。
「ああ、気にしないで。……僕らは朝倉くんの代わりに楽しもう。」
蒼は荷物を傍に置き、笑って窓際に設置されてるソファに腰掛けて、流れる湯の音を目を細めて言った。
穏やかな光景とは別に、自分は腰の怠さと節々の痛みを感じ蒼から離れてテーブルの端に座った。
穏やかな蒼の横顔を見ながら、自分は何度も浮かび上がってくる雄の顔をした桐生の顔を、頭から掻き消そうとしていた。
桐生に乱れた姿を見せたくなくて、必死に声を押し殺したが何度もキスされて、舌でこじ開けられ喘ぎ声を出したせいで喉も擦れている。
必死に腕を伸ばしてシーツを掴んで胸が露わになり、執拗に尖る突起を吸われ愛撫されると、桐生の屹立した雄で躰が軋むほど突かれた。
抵抗する程、それは厭らしく愛撫され、醜態を晒された。何度も体勢を変えられて、いつの間にか意識を失った。
その鈍痛と事後が染み付いて、中々感覚が抜けずに真昼から全く違う相手といると変な気分だった。
「…浴衣に着替える?」
菫は傍に用意されていた浴衣を取りだし、Mサイズの方を渡した。
「……ちょっと不安なので、俺は鏡見て着替えてきますね。」
流石にいきなり、菫の前で貧相な躰を晒すわけにもいかず、見えないよう洗面所で着替えようと離れた。
洗面所で上半身を脱いだ時、鏡に映った自分を見て言葉を失い眼を見張った。
「………ヒッ…!!」
シャツを脱ぐと、所狭しに鬱血痕が散りばめられ歯形も浮き彫りに見えた。
急いでシャツを着直し、すぐにその夥しい厭らしい痕を隠した。
「どうしたの?何かあった…?」
菫が心配そうに顔を出してきたが、首を振り平静を保った。
「……いえ、なにもないです。」
小声で後退り、苦笑した。
こんな、まだ日が当たるうちから、己の醜態を晒すわけには行かず、シャツを着たまま浴衣に着替えた。
「俺、やっぱり…少し体調が優れないので、蒼さん先に大浴場に入って下さい…。ちょっと横になって、う、内風呂を使います。」
「内風呂の景色も綺麗だから、一緒に入る?」
蒼は逞しい身体と胸元を見せて、浴衣を着ながら楽しそうに誘った。
「いや、今日は遠慮します。大浴場がどんな感じか教えて下さいね。はい、これタオルです。」
頑なに断り、残念そうな蒼を部屋から追い出して無理矢理大浴場に行かせた。
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