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第60話 蒼からの仕打ち
懐石料理を食べ終えると、蒼のマンションに行き身体を洗うと激しくキスをされて、そのまま倒れるように抱かれた。
こんなに激しく抱かれた事はなかった。
記憶が戻ると、付き合った当時と違う抱き方に優しく抱かれていたのだと、思い知らされる程だ。
残っている記憶の中の蒼は嫌がっても優しく愛撫し、何度も身体を気遣ってくれた。
恐らく今の恋人にはそういう愛し方をしているんだと思う。
対照的に分かると、自分が蒼にとって性欲処理のように思えて悲しかった。
ゆっくりと挿入するが、甘く走る悦楽は物足りなく自ら腰を動かなさいと根元までいれてくれず、その様子を蒼は眺めていた。
「……黒木君まで手を出されたら、困るんだよ」
急に人懐こっい柴犬のような黒木の名を呟く蒼が意味が分からず、対面座位にされると深く繋がられ、その意識も快感に酔いしれるとかき消された。
蒼は首筋を舌先で舐め鎖骨まで辿ると、舌を這わせて噛んでは強く吸った。
「……ッ……アッ……!」
「ごめん、痛かった?でも皐月は痛いの好きだよね」
笑って優しく囁くと肩も噛まれ、しがみつきながら耐えて、疼いてくる快感が増し腰を動かした。
「……んっ……あお……い……」
「欲しい?でもまだだよ。ゆっくりここも舐めてあげる」
座ったままやっと太い雄々しい屹立を根元まで入れられ、蒼は動きもせず、胸の突起を舌で愛撫した。
「……ッ……ああああッ……!」
「自分で動いて」
その言葉にふるふると首振るが、蒼は腰に手を回して中の前立腺に当たるように引き寄せた
「い、あぁっ……あ……」
「ほら、腰あたりだよね。皐月、動いて」
そう言って下から突き上げて、腰を動かすと蒼は酷く乱れる姿を楽しんだ。
何度も絶頂に達し、内液を出せなくなっても止む事はなく抱き続かれて内でビクビクと痙攣し震え続けた。
「……い……イッテ……ゆ……る……もう許して……」
「だめだよ、僕の弟から恋人を取ろうとしたんだから。その上もう男を懐柔してる有様なんだ。罰はちゃんと受け入ないと」
また何度も突いて蒼は深く口づけをし、唾液を吸った。
「あっ……」
「君はこうしないと、また裏切るだろ」
耳朶を噛まれて、昨日も抱かれたのに甘く囁く蒼の声は残酷にそう詰られ。頬に涙が伝った。
何度も執拗に愛撫し、いくことすら許さず、涙を流して許しを乞うまで蒼は止まない。
愛されたかったのに、何度も責められながら抱かれ辛かった。
黒木なんて何も関係ない。
蒼は誤解してる。
躰を繋げることで蒼に求められて嬉しかったが、罰を受け入れながら、ただ涙を流して悦楽に酔いしれるのは辛かった。
もっと優しく甘く抱かれてみたい。
笑顔を浮かべながら、互いに抱き合いたかったら、
その願いは一生叶わない。
逞しい肩にしがみつきながら、唇を重ねた。
蒼が好きだ。
いまだけでいい。その胸に縫い止めて欲しい。
あの最後の別れの言葉から、もう触れられないと思ったこの逞しく雄々しい躰に酷く抱かれるだけでも良いのかもしれない。
混沌とした意識の中、掴めない気持ちと悦楽をただ楽しんだ。
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