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第76話 タクシーと皐月
酔った皐月を流れてきたタクシーに押し込んで、自分のマンションへ連れて帰った。
タクシーの中で皐月は指を絡ませて、火照る身体を寄せて凭れ掛かって来た。
酷く酔っているのか、部屋についても甘えてきて、何度もキスを求めていた。
口移しで水を飲ませると吸って飲んでは、顎から零れ酷く厭らしく見えて介抱するつもりが、
そのままベッドに押し倒して、着ていた服を全て剥ぎ取ってしまっていた。
それでも皐月は甘えて頸に手を廻し、止まらないキスを何度も繰り返した。
誰かと間違えているのではと思ったが、酔って乱れた皐月は可愛くて愛しかった。
もし迎えに行かなかったら、皐月は黒木と一夜を過ごしていたかもしれない。
そう不安に思いつつ、何度も唇を吸い付かれて悪い気はしなかった。
「……んっ……ぁ……っ……」
胸の突起を撫でたり、捏ねたりして、優艶に乱れていく皐月は必至に長い腕を絡ませてしがみ付いて、久しぶりに優しく愛撫したような気がした。
皐月が気持ちよさそうに躰を震わせて、求めてくれるのが嬉しかった。
いつもなら辛そうな顔で与えられる快感に耐えて、必死で顔を背けようとしていた。
素直に反応する表情と躰が愛しくなり、さらに優しく唇を合わせた。
皐月を上に跨らせて滾った屹立を座りながら、ゆっくりと挿入すると甘い吐息を吐いて、沈むように受け止めて何度も唇を合わせた。
幸せ過ぎて、愛しい。
『あおい……すき……』
空耳だと思い、もう一度聞きたくて、さらにゆっくり奥へ太く猛った雄を突くように腰を引き寄せた。
『……んっ……すき……』
小さく濡れた甘い声は耳元で囁かれると、それは酷く猛った雄の情欲を誘った。
皐月はゆっくり腰を前後に擦り付け、気持ちいい部分を自ら探しながら淫らに動いた。
やっぱり皐月が好きだ。
ずっとこのまま優しく愛撫を繰り返して、抱いていたい。
揺らめきながら優艶に快感を互いに高め合って、皐月の中へ白濁とした雄を解き放った。
『……三年前の蒼みた……いだ……』
首筋に震えながら額をすり寄せて、皐月は耳元で呟いた。
動きを止めて、皐月を見つめると顔を寄せて唇を合わせて吸った。
「……ん、……蒼、今までごめん……」
皐月はそう呟いて、唇を離した。目尻には涙を溜めていた。
一瞬、何が起きたのかわからず皐月を凝視したが、皐月は眠ってしまい意識を手放していた。
躰を離して皐月を横にすると、温かいタオルで躰を拭いてやった。
細くなった躰を優しく拭き、そっと気持ちよさそうに眠る寝顔を眺めた。
皐月の頬には、目尻から溜まった涙がつたった痕があった。
皐月の記憶は戻っていた。
自分はなんて酷く残酷な事をしたのだろう、と急に現実に引き戻された。
ごめん、皐月。
僕は君になんて事をしていたんだろう
ごめん
ごめん、皐月
蒼は皐月の柔らかな髪をそっとキスをして、毛布をかけた。
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