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第二章 貢の悩み 三

 そしてその後、父親の妹である、死んだ妻と合流するようになって……。その時に誠は貢に対する変な感覚から抜け出せたはずだ。  貢と妻は良く似ていた。  だから妻と初めて会った時胸がときめいたことが誠の心を平穏にした。  しかし妻との距離が近くなるにつれ、年頃というせいもあったとは思うが、貢との距離が離れて行ったように思う。  もうきっと貢とはこれきりなのだろうと少しだけ淋しく感じた誠だったが、まさかまたこうしてしかも一緒に暮らすという展開になろうとは。人生はわからないものだ。   (それにしても。貢はどうして発作なんか。一度病院へ連れて行ったほうがいいだろうか。本人がなにより辛そうだ。今の貢が頼れるのは自分しかいない。だから力になってあげたい)  貢は学校でも無口な子供だった。見た目は女の子のような可愛らしさがあり、色も白く女の子からも声を掛けられることがあったのだが、彼がどうしても心の壁を作ってしまいなかなか友達もできなかった。  ましてや中学にあがってからある出来事以来同性の友達はある種の恐怖を感じ、必要最低限のことしか会話もできなかった。  しかし幸い学校でいじめられることはなかった。  もともと女子高だったところがある年から共学になったため女性の数が多い。  そしてこの学校は選択科目が多く、授業ごとに移動する事が多かったので、クラス授業が日に数えるほどしかなかった。  さらに、何よりも……。   「貢! 久しぶり、おはよう」 「早坂くん、おはよう」  活発そうな短髪の目の大きな女性が貢の背中をポンと叩く。  振り返ると笑顔の茜崎在華(あかねざき ありか)が他の友人を連れて立っていた。  講義室ではこれから心理学の授業があった。 「元気だった?」 「在華、竹光さん、おはよう……」

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