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第二章 貢の悩み 四
在華は貢の顔色を見てその日の彼の機嫌を知る。
少しでも青ざめているとさりげなく近くの席に座り、少しでも頬に赤みがさしていれば隣にそっと滑り込む。
在華の横には大人しい長髪の竹光美鈴(たけみつ みすず)が挨拶してすぐに微笑むだけで、それからは二人の様子を見ていた。
在華は今日の貢の顔色を見てそっと一席空けた隣に座った。
「……お父さん、残念だったね」
気を使いながら今まで何も言わず心配してくれていた友達の慰めの言葉に貢は思わずジンとなる。
「うん……」
「これから貢一人なの?」
在華の問いかけに一呼吸置いてから貢はそっと呟いた。
「ううん、叔父さんの家にお世話になることになった」
「そっか。貢くん、一人じゃないんだ。よかった」
在華の笑顔と、隣でほっとする美鈴の呼吸も同時に聞こえた。
貢にはあまりいいことではないのだが、心配してくれていた彼女たちにはいいニュースだったようだ。
彼女たちは随分自分の事を心配してくれていたようだ。
貢は自分を心配してくれる彼女のような人たちに感謝した。
実は彼女たちとは中学から一緒だった。
そして彼女たちがこんなにも過敏に貢を思いやるのにはわけがある。
彼女たちがすべてを知っているわけではない。けれど中学の時に貢の身に起きたある事件で貢が何かしらの心の傷を受けたことを知っていた。
何も話せない貢を許し、それでも心配し、支えてくれたのも彼女たちなのに、父親が死んでから何も連絡をしなかった自分を貢は少しだけ責めた。
「……大丈夫だよ。ありがとう」
勇気を振り絞って貢は彼女たちを見た。
僕は大丈夫だよ、いつもありがとうと伝えたかったが、だいぶ言葉足らずになってしまった。それでも彼女たちには伝わったようだ。
「あたしたちで何ができるかわからないけど、でも、いつでも何かあったら相談して。ほんとだよ」
「うん」
(もし自分が女の子だったらこんなに幸せな事はないだろう。そして誠さんに片想いしてるって相談できたら、どれだけ彼女たちに慰められるだろうか。いいや、こうして心配してくれる。それだけでも感謝しなくちゃいけない。こんな僕を心配してくれる。申し訳なく感じるほどに)
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