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第二章 貢の悩み 六

 リビングにある時計を見上げると夜の十時過ぎをさしていた。  高校生にはまだ早い時間だと思ったが、貢は寝室で既に寝ていた。  貢の部屋は奥の北側にある部屋になった。その部屋はもともと倉庫のようになっていたが、だいぶ前に色々整理して誰も使っていない部屋になっていた。  そこへ貢の荷物は置かれた。不思議なほど彼自身の荷物は少なく、そっと誠が部屋を空けると机だけ置かれ、そのすぐ横で布団に包まって貢が寝ていた。  むしろ父親との想い出の荷物の方が多いくらいだったが、それもなんとか貢の部屋の収納に収まり、やっと自分のダブルベッドで寝ることができる。  とりあえず自分と部屋を分けることで、あの発作はおさまっているようだ。  朝になり、少しだけ離れた場所にそれぞれの朝食を置く。今までは適当に朝コンビニのもので済ませることもあったが、もともと料理が苦手なわけではない。誰かがいれば作る。 「保護者面談のことわかった。先生とこの指定された時間に会えばいいんだな。その日はシフト調整してもらうよ」  誠が努めて明るく言うと貢は小さく頷く。 「あ、そうだ。これ俺の今勤めているところの名刺」  そっとテーブルに置かれた名刺には幸遊ブライダルと書かれていた。 「もし俺がいないときに何か困ったことがあったらここに書いてある連絡先に電話してくれ、あ、裏に俺の携帯のメアドと電話番号も書いてあるからそっちでもいい」  そっと名刺に指を置き、すっと貢の席の前にそれを滑らせた。 「……はい」 「それから夕食少しでも食べてくれたな。ありがとう」  貢は驚いた顔をして顔を上げた。 「なんて顔してるんだ」 「だって。そのっ、半分も残してしまったから……」  声が尻すぼみになり、うつむいてしまった貢に誠は微笑みかけた。 「父親を亡くして御飯をもりもり食べる方が普通じゃないさ。少しでも食欲があるだけ良かったと思うぞ。ただ、少し油っぽかったかな? 今晩はもっと体にやさしいものにする」  斜め対角線に互いに座り、朝食を食べる。 (今は距離を詰める時期じゃない……)  誠はそう思った。とにかく父親を亡くしてショックを受けている影響で貢は食が細くなっているのだろう。  痩せているからもともと食が細いのかもしれないが、少し様子を見てみることにした。 (疲れてる時は豚肉が一番なんだが、少し貢にはきつかったかな?)

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