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第二章 貢の悩み 十一
ぎこちない関係でも、会話が成り立っているだけでもよしとして誠はそのままリビングの方へ消えた。
貢もわかっていた。発作が起きてからの彼の自分を扱うやさしさに。
わかっている。誠はとても思いやりがある人だということを。
決して自分に対して酷い事などなかったことを。
彼が女性が好きで結婚したからって、それは誠にとっては当たり前のことで、それが自分を傷つけただなんていうのは自分のエゴで単なるわがままで……。
貢の胸の奥が再びズキンと痛む。それは先ほどの甘い衝撃とは違うもっとどろりとした嫌な感情だった。
思わず胸を手でぎゅっとつかみ抑えた。
唇を固く閉じ、目を閉じると目頭にじんわり涙が滲む。
(僕はどうして男なのに誠さんのことを思うとこんなに胸が張り裂けそうになるのだろう。叶うわけないのに、どうしてこんなにも気持ちが突き上がってしまうのだろう。この気持をどうしたらいいのだろう)
心療内科の先生のことは嫌いじゃない。僕が誰にも言えなかった気持を開放する場所を作ってくれた。
でも先生は女の人だ。どこまで僕のこの苦しい気持をわかってくれているのだろう。
ほんとは先生にも言わずに誰にも言わずに気持をずっと封印しておいた方がよかったんじゃないだろうか。
(どうして、発作が出てしまうの? わかんない。もうわけがわかんないよ)
貢は壁に背中を押し付けるとそのまま座り込んで顔を伏せた。
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