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第三章 貢の過去 六
「あの……」
その時在華はためらいがちに何か誠にいいたげなそぶりをみせた。
「ん、どうしたんだ? もしかして貢の事で」
「ええ、その、彼から何か聞いていませんか?」
「何を?」
「あ、あの……」
在華はスゥエットの裾をぎゅっとつかみ俯く。
「彼の体調のことです。どこか体が悪いとか発作を起こすとか」
「発作。ああ、彼は時折発作を起こすよ」
誠の言葉で在華は目を大きく見開いてため息をもらした。
「いまだにあのことがトラウマになっているのですね」
「あのことって?」
「ええ、中学の時に彼がストーカーに会って」
「ストーカー! それは本当なのか」
彼女はこくんとうなずく。
「それ以来彼男の人が苦手になっちゃったみたいで。体調も悪くして部活も辞めてしまったし、病院にも通っているし」
(そっか、そんなことがあって男が苦手に……ってまてよ)
「まって。相手は女の子じゃないの?」
意外な事実に困惑気味に誠が聞くと、在華は言ってはいけなかったのかということに気づき、慌てて口を塞いだ。
「いや、あ、そのっ、ここで聞いたからって、貢からはその話を聞こうとは思わないよ。でもそういうことがあったのなら、今度どういう風にケアしてあげたらいいか考えやすくなる」
「ごめんなさい、私ったら言ってはいけないことだったのかしら」 在華の顔はあきらかに後悔の色が見えていた。
「そんなことないよ、教えてくれてありがとう」
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