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第三章 貢の過去 七
帰りの電車の中で誠は深く考え事をしていた。
あれだけ笑顔の可愛かった幼い貢……。
しばらく会えない時もあったけれど、彼は中学の時にストーカーに合っていた。
しかも相手は男だというではないか。
思春期になって彼自身の心に影を落としているように感じたのは、両親の事だけだったわけではないようだ。
色々なことを思ううちに、積み重なった気持ちが黒々とした煙を上げて積雲になっていくような、いたたまれない気持が湧き上がってくる。
(一体なんなんだ。貢が何をしたっていうんだ。少しだけ大人しくて、それでも明るい元気な子だったじゃないか。幸せにやってるかと思っていたし、いつまでも子どもじゃないから離れていったのだとも思っていた)
思わずぎゅっと拳を握り締めた。
(聞くべきか……。いや、よそう。恐らくきっとそれは俺なんかじゃ到底想像もできないことなんだろう)
その時誠はあることを思い出した。
(そうか。だから男が嫌なんだ。まさか俺に対しても? 嫌な事を思い出してしまうからか?)
自分の存在が彼を苦しめているのだとしたら。
誠は貢を養ってやると行動したことが、かえって貢にとって余計な事だったのではないかと後悔した。
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