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第三章 貢の過去 十三
それからしばらくしてあっという間に49日が経ってしまった。
貢の母親が先に入っている先祖代々の早坂家の墓に貢の父親の骨壷も入れられた。
お線香の煙がたなびく中。お坊さんがそこでお経をあげてくれた。
喪服を着た二人は目を閉じて手を合わせる。
その間にも誠には色々な思い出が駆け巡った。
自分と妻、貢と父親の四人で遊んだこともあった。
確かにひ弱そうな感じの人だったけれど、いつも温和で貢のために必死で働いてきたのだろう。
その優しさゆえに色々な事を自分の中で処理しよう、誰にも迷惑かけずにいようとただひたすら一人で頑張ってしまったのだろう。
「色々なことがあったけれど、いいお父さんだったよ。僕の悩み事も相談に乗ってくれた。いつも貢の事を心配していた優しい人だったよ」
「うん……」
ふっとそれに応えてくれるように囁くような風が誠と貢の体を通り抜けた。
黙りこむ貢の横顔を見て、誠は先日貢の友達から聞いたストーカーの話を思い出したが、今日はそのことに触れないでいようと思った。
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