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第四章 誠の職場 二

 入り口に今日結婚式を執り行う4組のカップルの案内版があり、中は洋装や和装をした人たちが笑顔で笑談している様子がみえる。 (どこに訪ねて行ったらいるのかな誠さん。でも仕事で忙しいだろうし。そうだ。ホテルのコンシェルジュの人にこれを頼めばいいのかな?)  そうは思ったものの、エントランス辺りでまごまごしてしまう。恐る恐る入ろうとしては勇気が出ず、また外に逆戻りしてを繰り返してしまう。そうこうしているうちに背後にバスが停車して、中から団体客が溢れるように降りてきた。  彼らは一斉に貢の背中を押すようにエントランスからホールへ入ってくる。 「わぁああ」  貢は一階の式場入口奥まで人の波に流されてしまう。  宴会場のドアに入って行く人の流れの1つのドアに、見たことのある背中を見つけその姿にドキリとした。  その時間は宴会もたけなわで、少し自由時間でもあるのか人の出入りが多い。ドアが開かれる度に、ウェイターの格好をしている誠が熱心に料理を運び、静かにかつ迅速に行動しているのが見えた。  黒いベストに胸元には黒いリボン、腰から下までは清潔でかつ長めのエプロンをしていた。 恐らくこの式場の従業員の制服なのだろう。  動きはテキパキしているのに、宴会場のお客さまには柔らかな笑顔で腰も低く対応している。  その姿に思わず貢は胸が熱くなり、高鳴る胸を抑えつつ建物内の柱の影に隠れた。 (格好いいな叔父さん、ずっとここで眺めていたい)  誠は配膳が終わると、すっとその場から無駄のない動きで退場していく。  その間もお客さんたちの要望に応えるため、周りの様子を伺っているようだった。  その延長線にふと柱から顔だけ出していた貢と目が合う。  慌てて首を引っ込めた貢はお弁当の入った紙袋を握り締めた。 (今誠さんこっち見たかな? み、見ていないよね)  慌てるようにホテルのエントランスに足早に向かおうとすると背後からすぐに呼び止められた。 「貢!」 「……っ叔父さんっ」 「どうしたんだ。こんなところまできて」 「あ、あのっ」  しどろもどろになっている貢が持っている紙袋に思わず誠の視線が降りる。

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