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第四章 誠の職場 五
体格的に考えたら大男の方が大貫で、小さな痩せっぽちの男は小杉と普通は考えてしまうだろう。
でも実際は逆なのだから現実は面白いものである。
どうやら二人とも誠と同僚らしく仲もよさそうだ。
「ごめんなさいねぇ貢ちゃん、誠ちゃん今二組目の配膳のお仕事中で、ちょっと抜け出せないみたいなのね。だからあたしたちが様子を見にきたってわけ」
後ろの小杉も二枚目のおせんべいを口にしながらこっくり頷いている。
「あら、あんたもいたの? 一香」
大男の後ろから遠慮がちにそっと顔を出した女性も従業員のようだ。
優しそうな顔をしていて親しみやすそうな笑顔を向けた。ストレートの髪を綺麗にうしろでまとめている。
貢と視線が合うと少しだけ目をくりっとさせてにっこりと微笑んだ。
「みなさん、他に休んでる方もいるんですからね、静かにしてくださいね」
医務室の看護師さんに誡められみんなははぁーいと声を揃えた。
「大丈夫か? 貢!」
しばらくしてから慌てた様子で誠が現れた。余程急いでいたのか額に軽く汗をかいている。
「誠ちゃん、なんでこの子いきなり貧血なわけ? ちゃんと栄養のある食事させてるの?」
「食べさせてるよ、人聞きの悪い」
大貫がさり気なく飴を誠にも渡しながら視線を送ると、誠はなんとも複雑な顔で受け取った。
「まぁとにかくもうお昼も過ぎてるし、どうせなら一緒に食べましょうよ~ちゃんと栄養つけなきゃ。ここの食堂は栄養士が管理しているから完璧なんだから」
「そうだな。ここには従業員専用の食堂もあるから、そっちで一緒に食べよう」
「いえ、でも僕は……」
そう言い掛けた瞬間貢のお腹から小さくクーという音が鳴った。
(そう言えば、誠さんが作ってくれた僕のお弁当、持ってくるの忘れた……)
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