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第五章 過去の苦味 一

 クレープを食べた後、二人でショップを眺めたね。  それから二人で観覧車に乗ったね。  僕が花壇のパンジーを眺めていたことに気づいた誠さんはそっと背中に隠し持っていた花を僕にくれた。それは小さな小さな植木鉢に植えてあったパンジーの花。ショップに売られてたのは知っていた。その時も僕はその花をしばらく眺めていたから。  誰かから花をもらうなんて初めてで、とっても嬉しかった。 それから僕はそれを押し花にしてしおりにラミネートしてから時折眺めている。  目を開けるとカーテン越しにもわかるほどもう日差しがだいぶ貢の部屋を明るくしていた。  なんだか体中が痛い気がする。昨日は生まれて初めてバイトの体験をした。  色々な人のほんの少しの事情も垣間見た。そして何よりも誠さんが一生懸命働く姿を見ることができた。    でも帰りが最悪だった。  一体自分はどうしてしまったのかと貢は思った。 (誠さんの家にきてから今まで眠っていたはずの感情が、あちらこちらでゆれ始めて揺さぶられてしまう。  そして何に突き動かされるのか。あれから10年以上たって再会してみればこのありさまだ。気持はそのままで僕は体だけ大きくなった子どもなんだ)

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