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第六章 誠の心 一

 ブライダルホテル『幸遊ブライダル』のお昼の控え室では重箱のお弁当を開いた大貫とパイプ椅子を狭そうに座っている小杉がいた。大貫はきんぴらごぼうを、小杉は器用に箸を使い、から揚げをほおばっていた。   「なんか様子が変なのよね」 「ああ、おかしいな」 「何がですか?」  控え室にある花瓶の花を新しいものに変えながら傍にいた一香が尋ねる。 「指示の仕方が明らかに変なのよ、誠さん」  今日は多忙なため控え室で昼食を取ることにした大貫たちだが、午前中の誠の様子がおかしいという話題でもちきりだった。  誠はいつも通り仕事をしているつもりでいるのだが、前菜を最初に出さなかったり、花の種類の指定を隣の宴会場と間違えたり気づいた部下に訂正される始末だった。 「あ、きましたよ」  一香も手持ちのお弁当を広げ、二人にお茶を入れているとその話題の中心人物が部屋に入ってきた。 「ちょっと誠ちゃん、今日のあんたどうしちゃったのよ?」  誠はバツが悪そうにロッカーを開け、カバンからお弁当を出すと少しだけこちらを気にするようにちらりと見た。 「すいません」 「全く、接客業にあるまじき行為ね」 「僕は普通にやってるつもりだったのですけど……」 「あんたそれマジで言ってるの? 天然?」  思わず大貫が眉を吊り上げた。

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