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第六章 誠の心 二
「はぁ、なんだか説明のつかない衝撃があると、自分でも不可解なことになってしまうようです」
まるで他人ごとのように言う誠に大貫と小杉は顔を見合わせた。
「衝撃ってなに?」
いぶかしむように大貫が誠に問い詰めると、誠はもごもごと口ごもる。
「だからなに! はっきり言いなさいよ!」
バンとテーブルを叩く大貫に促されるように、思わず誠は立ち上がった。
「そのっ、甥の貢に何かあったり、普段大人しい彼から強く言われると、俺なんかショック受けるって言うか」
「なに言われたの?」
睨みを利かせる大貫に誠は観念したように、自分が二回も貢に強く言われて行動がおかしくなってしまった説明をした。
言い終わった後で左右の指を絡めてもじもじする誠を見て、目を丸くした大貫が噴き出した。
「ちょっとーやばいわよ、誠ちゃん。重度の甥っ子コンプレックスなんじゃない? 病院行ったほうがいいわよ」
「はぁ……」
「マジで心配よあたし。大袈裟じゃなくてさ、ほんとにあんたどうかしてたんだからね」
「はぁ……えっ、大丈夫ですよ!」
パイプ椅子を背中を丸めながら座っていた誠はきりっと姿勢を正してまっすぐ大貫を見た。
とは言えその勢いもどこか緩んだようにしぼみ、再び座り込んでしまう。
(確かに俺はどうかしている。
仕事に支障が出るほどのことではこの先たぶん身が保たない)
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