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第六章 誠の心 三

 帰り際、ここ数日の自分のおかしさを自覚した誠は、以前妻を亡くした時に、正確に言えばそれよりもだいぶ前に一時通っていた心療内科の予約をスマホからしてみた。幸い平日ということもあり、直前にキャンセルされた時間帯に予約を入れることができた。  あの時は喪失感から無気力になってしまったという感じだったのだが、今回はなんだかそれとはまた違う変な感情だったのだ。  観葉植物が可愛らしくあちこちに置かれ、みんなが静かに待っている待合室は安らぎの音楽が流れここちいい。   「お久しぶりね、日向さん、あれから調子はどう?」  診療室に入るとデスクの奥にメガネをかけた女医の香澄先生がこちらに向いて座っている。あの頃と変わらない微笑だった。 「それが……なんか変なんです」 「変?」 「私の家に危うく孤児になってしまうところだった甥を向かいいれて新しい生活を始めたんですが、なんていうかその甥っ子のことを理解しようとしてもなかなかできずに、しかも彼は僕が近くに寄ると発作を起こしてしまうんです」  香澄先生はふと何か思い巡らした様子で軽く天井に視線を反らした。そして再びこちらに向き直る。

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