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第六章 誠の心 四
「まぁ、それは大変ね」
「でも、私の事は嫌いではないらしいんです。感謝しているとも。だから一時期はそれでよかったんだと嬉しかったんですけど、やっぱり本音を聞こうとするとすぐに心を閉じてしまう」
先生はにそれらをさらさらとカルテにメモして行く。
「甥っ子さんは今幾つなんですか?」
「ええ、17歳です」
「……それは多感な時期だからかもしれませんよ?」
「でも、甥っ子は貢はその、どうして僕の傍にくると発作を起こすんでしょう」
「貢?」
香澄先生が言葉を一旦途切らせる。
「あ、はい、早坂貢という男の子でして、その、妻の甥にもあたる子です。昔はとても素直で可愛らしい子でした。本当に女の子みたいで、僕もその思わず間違えてしまうほど可愛らしくて愛しい子です」
「……そう、なんですね」
少し辺りに視線を泳がせた後、言葉が切れ切れになりながらも香澄先生はこちらに向き直った。
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