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第六章 誠の心 六

「先生、私はもしかしたらあの子だけ特別なんじゃないかと思うんです」 「特別?」 「ええ、その、男とか女とか関係なくあの子には不思議な魅力があって。その僕は彼が気になって仕方ないんです。しばらく妻との生活はそれはそれで楽しかったんですけど、それもまた真実だと思うんです。でも、それは何かを封印するようなそんな気持で……。僕はおかしのでしょうか」  先ほどまで少し深刻な顔をしていた香澄先生の表情が少し和らいだようにも見えた。 「日向さん、あなたも自分の心に素直になって自分をもっと大事にしてあげる必要がありそうですね」  顔を上げた誠の大きな手にそっと女医は手を乗せた。 「そうすれば今まで疑問に思っていた事がすべて解決するかもしれません」 「それはどういう……」 「あなたの心に真っ直ぐに向き合うことです。そして気づいたらその気持に素直になることです」 「先生……」 「あなたは見た目よりもとても繊細なんですね。そして自分よりも誰よりも相手の幸せを考える。そんな人でしたね。でも時には自分に対して我がままになってもいいんですよ。あなたは病気ではありません。そしてあなたが素直に行動すればその甥っ子さんも助けてあげられる」 「……」 「甥っ子さんの発作の原因はあなたの彼への心の向き合い方にあるのかもしれません。違いますか?」  誠は香澄先生の目をまっすぐに見た。 「彼への心の向き合い方ですか……」

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