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第七章 すれ違う心 三
「あの、どなたでしょう?」
よそ行きの声で尋ねると、男は何がおかしいのかクスクスと笑い出した。
「あの……」
男は顎をしゃくりあげて誠を睨みつける。
「あなたはどなたですか?」
「俺のことか?」
再びクスりと笑うと男は腕を組み横目でこちらを見る。
「俺はあいつと付き合あいがあった男だ。もっとも俺は今でも現在進行形だと思っている。あいつは勝手に過去の事にしているけどな」
誠はまるで頭を思い切り殴られたような衝撃に襲われた。
「迷惑だろう。一人で気楽に暮らしていたところを甥だかなんだかに生活の面倒みさせられて」
「そんなことはありません」
思わず声が震えているのが自分でもわかる。
(まて、落ち着け。付き合ってるっていうのは付き合うってことだよな。男同士だよな。ということはあれか貢はそうなのか……)
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