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第七章 すれ違う心 四

「あれ、なんか動揺してない? もしかしてこういう話は苦手か? 貢がそういう趣味なの知らなかった?」  男は軽く小首を傾げる様に言う。  妙に自信ありげな我孫子の態度に誠は少し苛立ってくる。 「どういう趣味かは知りませんが、たぶん貢はその時正常な精神状態ではなかったんでしょう。でなければあなたみたいな人選ぶはずがない」  色々なことがまるでパズルのピースが合わさっていく様に少しづつ誠の頭の中が整理されていく。  ふと、背後から聞き慣れた革靴の音が聞こえた。  振り返ると驚いた顔をして貢が立っていた。  我孫子と誠の両方を一度に見て、あきらかに動揺している。 「あ、我孫子……。なんでこんなところにお前が」  貢は胸を手で抑えながら青ざめていた。  そしてそのままその場から後ずさりする。 「待ってくれ貢!」  動揺する誠に我孫子は二人の様子をまるで楽しむ様に眺めていた。 「貢、ちゃんと話をしよう。二人でいままでのこと整理して行こう」  誠は我孫子を睨みつけた。 「そういうことだから、帰ってもらおうか」  我孫子は中身の少なくなったコーヒーの缶を振りながら、はいはいとばかり背を向けた。 「まぁお二人さんでしっかりと話し合って決めてくれや。貢、気持の整理がついたら俺のところにきな」

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