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第七章 すれ違う心 十一

 貢は翌朝から誠の働いているホテルの近くのファミレスで時間を潰した。  そこから丁度出勤してくる従業員たちが見えるのできっとあの人もくるに違いない。  そのうちに目的の人が出勤してきた。少し地味ではあったが高級そうな毛皮を着ている。  貢は即店を出て、その人を追いかけた。 「あの……」 「……貢ちゃん!」  大貫は半分驚いた目で貢を見ていた。  目が少し落ち窪んでいたが眼光は鋭い。ふんわりとした毛皮の中は痩せぎすな体だが、どことなく頼りがいのある貫禄を漂わせている。 「どうしてたの? 誠ちゃん昨日えらい剣幕だったのよ」 「わかってます。でも、誠さんには秘密にしててください。そ、それから、無理なお願いだとわかってはいますが、どうか働き先が見つかるまで大貫さんのところに泊めて下さい」  貢にしては思い切った行動だったが、他に行くあてがないだけに必死だった。頭をさげたままの貢をみて、大貫は少しだけため息を吐くと貢をにらみつけた。 「誠ちゃんと何があったか知らないけど、素直に彼の家に帰りなさい」 「無理なんです。帰れません」 「何故? ちゃんとした理由を言わないと納得できないわね」 「叔父さん、無理に僕を好きって言うんです、そんなこと思ってもないくせに」  貢の苦しげな表情に大貫は眉をくいっとあげた。  そしてしばらくうーんと考え込んだ。

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