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第七章 すれ違う心 十二
「僕、未成年なんでなかなか働き先が見つからなくて、やっぱりそのっ住所とかないと駄目みたいで」
「そりゃそうでしょ。あのね、その前にあなたは学生よ。学校にとにかく行かなきゃ」
しかしガンとして貢はその気持を譲らなかった。
「大貫さんに頼れないなら、僕、もう行きます。公園とかで野宿します」
「ちょっと待ってよ」
大貫は頭をかきながらしばらく目を閉じ少し思案したようだ。
「んもぉ~悪知恵の働く子ね。ここであんたを行かせたら私一生誠ちゃんに恨まれちゃうじゃないの」
大貫は携帯を取り出し電話をしようとする。じっとその様子を見ている貢に感づいたのか「ホテルに電話するのよ。午後出にするって」と渋い顔をしつつふいっと横を向いた。
電話が終わるとホテルの表にいるタクシーにそそくさと貢を乗せ移動する。
ホテルから車で5分ほどで唐突にタワーマンションが現れたと思うと、タクシーはそこで止った。40階はありそうな大きなタワーマンションのエントランスは華やかで、そこを通り抜けるとコンシェルジュが笑顔で「お帰りなさい」と出迎えた。
「さっき出勤したばかりでもうお帰りなさいなんて変よねぇ」と大貫が言うと、良く知っている間柄のようでコンシェルジュは笑顔を見せた。
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