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第七章 すれ違う心 十四

 話は一日前に戻る。  誠は貢がいなくなったことで着替えもそこそこに表に飛び出した。  裸足でかかとを潰した状態のスニーカーを履き、駅周辺や貢が寄りそうなところ、学校にまで足を伸ばしたが貢の姿は見えなかった。 (貢、発作でも起こしたらどうするつもりなんだ)  苦しそうな貢を思い出したらいてもたってもいられない。  たまらなく怒りを感じる。もちろん自分に対してだ。  ここしばらく一緒に暮らしてみて彼にアクションを起こす度に反応もデリケートなのはわかっていたはずだ。なのに……。    必死で探し続けるうちに気づくともうお昼を過ぎていた。  今日は午後出だったのだが、決心してそのまま職場に向かう。  ホテルの裏の方にある従業員の入り口を通り、控え室の扉を開くとテーブルにお弁当を広げていた大貫と一香と目が合った。  明らかに切羽詰った形相の誠をみて、ただならぬ空気を察した大貫はさっと小杉の後ろに隠れる。  誠はコートにジーンズといういでたちではあったが、中に着ている服がどう見てもパジャマの上に見える。  そして裸足で中途半端に履いているスニーカー。 「一週間休暇をください!」 「え、あ? どうしちゃったのよ」  最初の勢いがどこか失速し、誠は決まり悪そうな顔をした。 「ちゃんと理由がないとお休みさせないわよ?」  大貫の言葉でしぶしぶ誠は本音を言った。 「貢くんがいなくなった? 何故?」 「俺がみんな悪いんです。俺がいつもあいつを振り回してしまう」 「どちらかというと誠ちゃんが貢くんに振り回されてる感じだけど?」 「とにかく、あいつは発作があるんだ。男が傍にくると発作を起こしてしまう。だからそんな体で家を出てこの先どうするんだって、俺は一体どうしたら、いっ、一刻も早く探さないと」

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