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第七章 すれ違う心 十五

「男が傍にくると発作ねぇ……?」  焦る誠に大貫はヤレヤレといった感じで腕を組んだ。 「まぁ、少し様子を見たら? 私も彼を見かけたら連絡するし、ちょっと今日の夜にでも探してみるわよ。案外近くにまだいるかもしれないし」 「すいません、よろしく頼みます」  誠はふかぶかと頭を下げた。格好が格好なだけに少し笑いもこみ上げてくる。 「ああ、でもね、冷静に行動しなさいよ、彼を見つけても怒ったりしないこと」  誠はそのまま一週間の休暇を取り、再び貢を探しに表に飛び出して行った。 「まったく、自分の格好をなんとかしてから探しなさいよね、落ち着きのない」 「でも、貢くんがいなくなったって何かあったのかしら」  一香が少し心配そうに広げようとしたお弁当にフタをして、立ち上がった。 「待ちなさいよ。貢がどこに行ったのかもわからないのに、一香までやみくもに動いてどうするのよ」 「でも……」 「全く、誠ちゃんもあんたも貢に過保護過ぎ。オムツはいてる赤ちゃんじゃないんだし、体は細いったってもう大人と変わらない大きさなんだから、思春期によくある衝動でしょ? ほっとけばいいのに」  そんな状況だったので大貫はまさか自分のところへその貢が飛び込んでくるなど考えもしなかった。

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