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第七章 すれ違う心 十六
薄暗くした部屋の中では任侠物の映画が流れていて二人とも熱心にそれを見ている。
小杉はお買い得と書かれたいもけんぴ二袋めを口にしている。
キッチンの隅にあるかごには、これと同じ袋がまだ三袋ほどあった。
貢の目の前のお皿にもいもけんぴとお茶が置いてある。
同居させてもらうのだから、二人がなにをしようと文句は言えない。
「この師弟は間違いなくボスに惚れてるわね。好きだとは言ってないけど、態度にそれが表れてるわ」
貢は画面をじっとみている。
「ほら、彼の大事にしているものをそっと寝てるボスの傍に置いたわよ。なんか泣けるわね、こういう展開」
弟子はそのまま彼の命を守るために自分の命を投げ出すという展開だった。命が救われたボスは彼が置いていった形見を見てそれを抱きしめながら泣いた。彼に想われていたこと、彼が自分の幸せを一番に考えていてくれた事などだ。
それを見ていたら貢もなんだか泣けてきた。
(自分も叔父さんのために命を投げ出せるだろうか。叔父さんの幸せを一番に考えてあげられるだろうか)
もっていたハンカチを握り締めて大貫はそっと目頭にそれをあてる。
映画が終わると、大貫は涙で目を真っ赤にさせていた。
部屋が明るくなるとふと現実に引き戻された気持になる。
ふとハンカチから顔を上げた大貫は誠を見て目を潤ませ、手をのばしかけ止めた。
「あっ、そうそう。誠ちゃんから聞いたわよ。あんた男に触れられると発作起こすんだって? あたしたちもあんたには触れられないのかしら?」
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