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第七章 すれ違う心 十九

「とても保存状態がいいのね、その押し花。よほど大事にしているのね」 「昔、大切な人にもらった花なんです……」  誠さんにと付け加えようとして押し黙る。  一香が誠を見ている視線にもやもやしたのを思い出した。  一香を見ると彼女はそんなことを気にする様子もなく、鍋の準備を始めにキッチンに向かっていた。 「貢くん、よかったら手伝ってくれない?」  一香は持参のエプロンを広げて付けると、袋からもう1つエプロンを出して貢に差し出した。  スーパーの袋から、白菜を丸ごと取り出し、切りはじめる。 「一香さんは、そのっ」 「なぁに?」 「ま、いや、叔父さんのこと……す、好きなんですか?」  思わず自分でも大胆な質問をしてしまったと貢は急に動悸が激しくなった。  切りながら一香は軽く微笑む。 「……のつもりだったんだけどね。こんなこと不謹慎かもしれないけれど、誠さん、奥さん亡くしてから淋しいんじゃないかなって」「……」 「でも、なんか違うのよね」 「違うって?」 「まだ誠さんの心の中に誰かがいるの。それは……ううん。奥さんと出会うずっと前からね」  誠の心の中に加奈子以外の存在がいることに貢は軽くショックを受けた。

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