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第七章 すれ違う心 二十

「奥さんと結婚する前、誠さんは誰かに片思いをしていたらしいわ。でもその人とはどんなことがあっても叶う恋じゃないと諦めたそうよ。その後で奥さんの方から猛アタックを受けて結婚したらしいわ。誠さんが片想いしてた人ってどんな人だったんでしょうね?」 貢は頭が真っ白になったままで一香の話も半分頭に入らない。 (そうか、まだ僕の知らない誰かが誠さんの心の中にいたんだ……)  思わず天井を見上げる。そうしないと涙が出てきそうだったからだ。 (やっぱり家を出てきて正解だったんだ。僕がいたら、誠さんの新しい恋の邪魔になってしまう。彼には幸せになってもらいたいから) 「それにしても不思議ね、誠さんはその人に花を贈ったらしいわ。その花とそのしお……」  一香の言葉に重なるように玄関のベルがけたたましく鳴る。

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