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第八章 パンジーと誠 一
「んもぉ。誰よーこんな時間に……うるさいわね」
そう言いながら大貫はエントランスのインターフォンのモニターをボタンを押した。
しかしそこには誰も映っておらず、どうやらもうその主は玄関の前まで来ているようだ。
鍵穴から外を見て大貫は「きゃっ!」と小さく声を上げた。
「なぁに? どうしたの?」
一香と小杉が玄関へ向かっていく。そのまま貢は一香の言われた通りに野菜を切っていた。
(誠さん、誰が好きだったんだろう。僕の心当たりの人がいない。やっぱり離れていた数年の間に? いや、でも離れていた時期は誠さんと加奈子さんが結婚していた時期だし……一体誰なの?)
なにやら玄関の方から大貫たちの騒がしい声が聞こえたが、その主は彼らの制止も無視して部屋に入ってきた。
リビングに血相を変えてきた人物を見てニンジンを片手にした貢が固まる。
「貢……お前……!」
目の下にクマを作った誠が凄い形相でそこに立っていた。
誠は入ってくるなり、キッチンにいる貢の傍にきて彼の頬を叩こうとした。大貫たちがひっ、と小さく悲鳴をあげる。
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