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第八章 パンジーと誠 三

「カンパーイ!」 「まぁ、なにはともあれ、よかったじゃないの! 二人が再会できて」 「本当に良かった。貢になにかあっていたらどうしようかと思っていたからな」  久しぶりに誠は大貫に勧められてビールを飲んだ。安心して飲むビールは美味しい。   (……誠さん……。そこまで心配してくれてたんだ)  その隣で貢はジュースに口を付けながらそっと誠の方を見た。  目の前には美味しそうな鳥鍋がぐつぐつと音を立てていて、一香がみんなの小皿を受け取るとポン酢の入った小皿にそれぞれに鶏肉やシメジ、しいたけ、白菜、葛きりなどの具を入れていく。  それらが合わさり湯気から食欲をそそるいい匂いがした。 「それにしても誠ちゃん、よくうちに貢ちゃんがいるってわかったわね」 「職場に行ったら、君らの様子がおかしくて、一香に会ってもよそよそしいし。カレンダーを見たらそれそろ恒例の鍋パーティだってことに気づいた。けれど君らは何も言わず、こそこそ帰るのを見て。ああ、俺を呼ばないのは何か理由があるんだなと」 「こっそり出てきたのによく気づいたわね?」 「当たり前だろ。貢を探すので神経鋭くなってたからな。俺を呼ばないってことは俺に不都合な奴がいるってことだろ?」 「普段鈍い癖にこういうところは鋭いのねぇ」  妙に関心しながら大貫はあつあつ豆腐をほふほふと美味しそうに食べ始める。 「で、? 貢ちゃんはもう観念してすぐに叔父さんのところに帰るのね?」  逃げはしない。けれど叔父さんのところに帰ることに貢は黙ってしまう。 「当たり前だ。今日連れて帰るぞ」 「でも……」 「でも、なんだ?」  質問すると黙りこくってしまう。  一香はなんとなくピンときた。 「遠慮しているんじゃない?」 「何の話だ?」

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