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第八章 パンジーと誠 六
安堵の気持からあたりを何気なく見ると、マンションの駐車場に見慣れない一台のバイクが置かれているのを見つける。
大貫がふとそちらに視線を向けたが誰もいない。
「どうした大貫くん?」
「いいえ、なんでもないわ」
(うーん。住人のゲストのものかなにかなのかしら?)
しかし、そのバイクの主は彼らが見えない場所でその状況を面白くないと思っていた。
「遅かったか。何がどうなってあいつら仲が戻ってるんだ? ちっ」
ライダースーツを着た我孫子が腕を組みながら二人が一香の車に乗り込むのを見た。
帰りの車の中、隣で誠は眠ってしまった。
「すいません、送ってもらっちゃって」
「ううん、いいのよ」
「ごめんなさい。僕、結局色々な人に迷惑かけてしまった」
俯く貢にバックミラー越しに一香が微笑む。
「いいのよ、誰にだってそういう時はあるわ。そうやってみんな助け合っていくものなのよ」
高台から見える外はすっかり暗く、時折ビルの明かりがキラキラと遠くまで見える。
車内の静けさの中でふと一香が思い出した。
「そう、そう、貢くん、あのねパンジーの花言葉って知ってる?」
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