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第八章 パンジーと誠 七

「パンジー?」  不意に聞かれて貢はすぐさっき一香に見られたしおりのことだと気づく。 「いいえ、わかりません。」 「『私を思って下さい』って意味なの……素敵でしょう」  少しだけ目を見開いた貢に、一香は微笑むとそれからは特に何も話しかけることはなかった。  誠は少しお酒に酔っていて、ここ数日貢を探すことで眠れない時もあったのだろう。  マンションにつくころ二人で誠を起こすと、少しだけ酔いが覚めたのか「うん……」と言って起きてくれた。  けれどまだ十分お酒臭い。  一香の車からマンションの部屋になだめながら二人で連れて行くのが大変だったが、なんとか部屋にまでたどり着けた。  貢は一香にお礼をすると彼女は小さく「頑張ってね」と言って手を振った。 (何をどう頑張ればいいのかな……)  ただただ、戸惑うばかりで、この先どうしたらいいのか貢はわからないでいた。 「誠さん、僕、どうしたらいいのかな?」  寝ている誠のベッドの傍で貢はぽつりと呟いた。 「大丈夫だ。俺がなんとかしてやるっ!」  誠が急に上半身を起こして叫び出したので貢はびっくりした。  どうやら誠の寝言だったらしい、彼はすぐにむにゃむにゃとわけのわからないことを呟き、再び倒れこむと、いびきをかいて寝てしまった。 「もう、叔父さんたら……」

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