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第八章 パンジーと誠 十四
「お前らっ、邪魔だどけ!」
抑えていた力が一気に開放され自分の行方を塞ぐ仲間たちを、誠は学生時代にやっていたラグビーを思い出したかのように突進して行った。
「な、なんだこいつ、うわっ!」
一気に人の壁が崩れていく。
「どけっ!」
崩れたところから誠は抜けると一気に走り出した。
必死でバイクの行方を追いかけるように走るが、どれだけ誠の足が速くても相手の方がさすがに速い。
貢が乗せられたバイクがどんどん遠ざかっていく。
「叔父さん!」
「貢ー!」
バイクがとうとう見えなくなり、それでも誠は必死に走った。
しばらく真っ直ぐな道を全速力で走ると、その先に交差点が見える。
誠はそこで一旦止まり、左右を見渡した。
すでに二人の姿はどこにも見えない。
「くそっ!」
誠はすぐに携帯を取り出すと電話をした。
『どうしたの? 誠ちゃん』
『大貫か? 頼む、この時間にバイクでホテルに入る男二人組を探して欲しいんだ』
『まーた無茶振りするわねぇ。誰を追っかけてるのよ』
『貢が、昔の男、我孫子ってやつにバイクで連れて行かれてしまった』
『なんですってぇ。それは一大事だわ。その男の格好は?』
『黒のライダースーツだ』
『わかったわ。仲間のホテルのオーナーたちにLINAで連絡してみる』
そのまま誠は交差点でバイクの消えた四方向をぐるりと眺めた。
(まだか、くそっ。貢っ)
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