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第八章 パンジーと誠 十六

「お、叔父さんっ」 「我孫子、さっきのお返しだっ!」  そのままダッシュして誠は我孫子に猛タックルする。  すると同時にエレベーターのドアが開いた。 「うわっ!」  我孫子は誠に体当たりされて、エレベーターの隅まで派手に転がる。  そしてそのまま誠と一緒に乗ったエレベーターは閉じた。 「叔父さん!」 貢は慌てて開くボタンを押したが、二人は中で取っ組み合いをしたまま、エレベーターは上昇していく。 エレベーターはどんどん上がって行き、表示が6階にまで達していた。 貢が辺りを見渡すとエレベーターの右横に非常用階段が見える。 そのまま階段へ向かい駆け上がっていった。 途中で息が切れそうになったが、必死だった。  エレベーターの中で誠と我孫子が取っ組み合いをしていた。  エレベーターが開くと、二人はホールに転がり出てくる。  誠はすでに顔に殴られた跡があった。  貢は心の中で悲鳴をあげる。 「俺に勝てると思ってんのかよ、おっさん!」  再び我孫子が拳を誠に向け殴りかかろうとした。  貢は即誠を庇おうと彼に覆いかぶさった。 「僕の大切な人に危害を加えないでっ!」 「ちっ、貢、どけっ!」 「嫌です嫌です嫌だ! お願いですっ、この人は俺の命より大事な人なんだ! 片想いだったんだ、ずっとずっと!!」 「……みっ……貢……!」  貢は何があっても誠から体を離さないようだ。目に涙を浮かべて必死にしがみついている。 「大丈夫かっ!」  すぐさまホテルの警備員たちが駆けつけてくる。

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