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最終章 君の想いをきかせて 五

 実際あの遊園地の後から自分たちの仲は恋人としての進展がない。  ただ、あの頃と確実に違うことは毎日の食卓のテーブルが対角線ではなく、対面で向き合っていること。  部屋にひきこもりがちだった貢が自分と一緒にリビングでくつろいでくれてること。  それが誠にはとても心地よくて。今いい関係であると感じている。  貢も以前に増して表情も穏やかになったり、食事の支度を手伝うようになってくれた。  貢がくれた押し花のしおりはいつでも大事にカバンにしまっている。  互いに互いを思っていた事は間違いないと思うと誠はそれだけで嬉しくて、貢と普通に生活できている今をもっと大切にしたいと思っていた。  それは貢も同じことだった。誠と今すぐにどうこうなるという気持がなくはなかったが、前に勢いだけで失敗してしまったことがあったから、何よりも誠の気持を尊重したい。  乾いた洗濯物を物干しから下ろして一枚一枚畳む。  自分よりも大きな体の誠のセーターは大きい。  洗いたての乾いたセーターを貢は思わずぎゅっと抱きしめた。  その様子をふと誠は目にしてしまった。  誠の中で貢のしぐさが愛おしく感じた。あれから貢は誠に笑顔を向けることが多くなり、買い物に行くとき、誰も通らない道でぎゅっと手を握ってくれることが貢にはとても嬉しかったようだ。

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