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最終章 君の想いをきかせて 七

 色々思案していると誠の考えが読めたように、貢がまた少し顔を赤らめる。 「そのっ、一香さんとか大貫さんのお友達になってくれたホテルのシェフの人とかが色々教えてくれて……」 (そうか……。あいつら、俺がいない間に貢に教えてたのか、全く。おせっかい焼きめ)  そう思いながらもつい彼らの優しさに頬が緩む。 「口に合うといいんだけど」  席についてお皿によそったポトフを一口口に含むと、コンソメのスープと丁度よく煮えていた野菜たちが甘くとろけるように口の中で広がる。 「美味しいよとっても」  よく見ると野菜の切り方が不恰好で、またそれが誠の心にジンと染みてくる。ウィンナーはタコの形のようなものになっているがまだタコとはっきり認識できない。  貢は近頃よくするようになった少しはにかむような微笑みをした。  それが時折誠の胸の奥を突いてきてキュンとなる。  自分が好きになったあの時の笑顔を向けてくれることが多くなったからでもある。  エプロン姿で花を飾り、自分なりのメニューを作ることに熱心な貢の姿を見ているとそれだけで背中から抱き寄せたくなってくる。  買ってきたちくわの中にチーズを挟んでそれを肉に巻いている貢の横顔は熱心になりすぎて小さな唇が少しだけ尖っていた。小さくてぷるんとした唇がとても可愛い。  誠は衝動で思わず背中から抱きしめてしまった。 「誠さんっ!」  思わず貢の動きが止まる。 「貢……」  誠の声がいつもより熱っぽい。貢は少しだけ体を固くした。 「そんな体を固くしないで」 「どうしたんですか」 「うん、こんなに色々してくれて、貢の笑顔を見ていたら急に抱きしめたくなった」 「叔父さん……」  しばらくそのまま貢は抱きしめられる。  貢の白くて丸い頬はすでに赤みを帯びていたが、そこに思わず誠は頬を寄せた。 「あ、叔父さん……」  少し体を震わせていたが、それはあきらかに拒絶ではない反応だ。

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