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最終章 君の想いをきかせて 十

「いいのか? 貢……」  誠の言う意味が理解できた貢はそのままうつむくとぽつりと呟いた。 「いいのかな? 僕、だって」 「ん?」 「だって僕の体はあいつに……」  嫌な記憶を思い出して唇を噛む貢に、誠はそっと頬に手を当てた。 「だからこそだ。嫌なことはもう忘れて欲しいから、これからは楽しいことばかりであって欲しいから……一緒に幸せになって欲しい」  今までずっとそれを望んでいたのに、いざとなるとそんな幸せが怖くなる。  こんな自分が幸せになっていいのだろうかとさえ感じてしまう。  そして正直怖い。それは確かに初めてのことではなく、辛い想い出でそのことは良く覚えている。  けれど、今度は本当に心から好きな人だからこそ、自分がどんな風に感じるのかが怖い。    目の前で誠が上着を脱ぐと、長年憧れていた人の上半身がベッドルームを照らす光で眩しく見えた。思わず自分の体が震えているのがわかる。その様子に気づいた誠が心配そうに顔を覗かせた。 「大丈夫か?」 「うん」 (何をためらう理由があるっていうの。しっかりしなきゃ。僕はこの日を長い間待ち望んでいたんじゃないか。叶わないと思っていたことが現実になったんだ)  緊張している貢を見て誠はくすりと笑う。 「体を固くして、寒いのか?」  誠は布団の中に入ってくると、怖がらないそうにそっと貢を抱きしめた。  しばらく暖められるように貢は誠に抱きしめられる。  もっともっと怖いものかと思った。  けれどそれは貢の想像より遥かに心地よくて、意識がぼおっとしてきて、ありえないくらい甘い気持ちで満たされた。  誠の胸に顔を押し付け、大好きな彼の匂いを思いっきり吸い込むだけで幸せに満たされた。  そっと唇を首筋に当てられてそれだけでしっとりと汗をかいてしまった。 「暑いか?」  耳元で誠にそっと囁かれて貢はうなずいた。 「じゃ脱ごうか」  誠はそっとボタンに手をかけ、貢のシャツを脱がしていく。  思わず貢は手で顔を覆った。 「お願い……電気を消して……あなたが好きだから、だから、とても僕恥ずかしい……」 「……わかった」

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