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最終章 君の想いをきかせて 十七
「我孫子本当にごめん。あの時の僕はどうかしていたんだ」
「俺の事好きだって言ったよな?」
その声も力なく、こちらに視線を向けることもなく、ただ、疲れた様子だった。貢は逃げてはいけないと感じ、素直に今思う自分の気持を吐露しようと思った。
「……辛かったんだ。あの人への気持が絶望的になって、僕はたった一人になってしまったって……自暴自棄になっていた」
「……そうか。で? 今はどうなったんだ」
「今は、やっと両想いになったよ」
「……そうか」
少しだけ間があき、呟くように言う。
「我孫子、ごめん、僕。だからもうあなたとは付き合えない」
今やっと分かった気がする。自分がもし逆の立場だったら、自分はとんでもないことをしてしまったのかもしれない。
我孫子があんな風に自分を強引にホテルへ連れ去ろうとしたのは、彼的には大きな賭けだったのかもしれない。しかも恐らくあれ以来逃げまくっていたのだろう。服もあの時と同じ黒いライダースーツのままで、着のみ着のままの状態だった。
「本当にごめんなさい、最初からはっきりこういえばよかったんだ。なのに僕はずっとはっきりしないまま君から逃げていた……」
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