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最終章 君の想いをきかせて 十九
貢が気づくと、暗い闇の中で呆然と立っている自分がいた。
見たこともない暗い道だ。どちらにどう向かったらいいかもわからない。
遠くから川のせせらぎが聞こえているような気がした。
(僕は本当に馬鹿だな。つまらないこだわり持ってたせいで、大事な人ともさよならしなくちゃならなくなるなんて……。
誠さん……。折角僕はけじめをつけたのに、こんなことになってしまった。 でも信じて、僕は本当にあなたを愛しています。
あなたは僕の人生そのもので、一時も忘れたことがなかった。今だって。
折角再会できたのに、何故あんなにそっけなくしてしまったのだろう。
こんなに時間が限られていたのなら、僕はためらうことなく全力で誠さんに向き合うべきだった。
答えなんてシンプルなことだった。ただ、『誠さんが好き』それでよかったんだ。加奈子さんがいようがいなかろうが、その気持を真っ直ぐに伝えていれば僕はこんなに回り道をしなくて済んだのに。
僕は馬鹿だ。何をやっていたのだろう。
こうして人は後になってから色々後悔するものなんだな)
後にも先にも行けず、暗闇の中で貢はへたりこむと膝を抱えた。
(それなのに、そっけなかった僕にくじけることなく誠さんは自分から心を開いて、一生懸命僕に笑顔を向けてくれた。
いつも人の幸せを必死で考えてくれる人だった。
そう昔から好きだったけど、僕はあの人に再会して更にあの人が好きになっていた。小さな頃よりももっともっと強く、深く……)
「愛しています誠さん、心から……会いたい、あなたに会いたいよ」
涙の粒が後から後から溢れてくる。
(もしもう一度叶うなら、僕はあなたに会いたい。
そうしたら今度こそ僕は全力で誠さんを愛する。
僕の持てるすべての力で彼に自分はあなたを愛していますって言うんだ。
そしてあなたと同じように愛する人の幸せを一番に考えられる人になるんだ。
それはもう叶わない夢になってしまったけれど……)
涙の粒が後から後から頬を伝い、嗚咽となって貢は泣いた。
自分の泣く音だけが何もない空間に広がる。
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