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最終章 君の想いをきかせて 二十

 そうしていると目の前にぼうと白い光りが灯った。  顔を上げた貢の前に懐かしい人の姿が現れた。 「貢」 (……お父さん!) 「なにをやっているんだお前、やっと幸せになれたんじゃないか」  貢の父親が柔らかな笑顔を向ける。そこには生前の苦悩するような表情は少しもなく、何かから開放された穏やかな笑顔だった。  その笑顔を貢は子どもの頃何度も見ている。懐かしい大好きなお父さんだ。 「ごめんなさい、お父さん。僕、本当に馬鹿で、こんなことになってしまった。こんな馬鹿な息子でごめん」 「お前は馬鹿なんかじゃないよ。なんて一途なんだろうと。気づかなかった。気づいてやれなかったことに後悔している」 「お父さん」 「お兄さん、あなたのせいじゃないわ。私が悪かったの」  ふわふわと幻の中から加奈子の姿が現れた。 「加奈子さん!」  加奈子もすべてを悟ったように貢を温かなまなざしで見つめている。 「私のせいだわ、私のせいでずっと貢を苦しめてしまった。本当にごめんなさい」  貢は首を思い切り横に振った。 「ううん。加奈子さんのせいじゃないよ。加奈子さんがいたって、僕は自分に正直になるべきだった。なのに僕はずっと自分の殻に閉じこもったままだったんだ。そんな内に篭もった僕を神様は許してくれなかったのかな。僕は罰を与えられたのかな」 「何言ってるの、そんなこと私がさせないわ」 「そうだ、父さんだってそんなこと許さないぞ」 「今度こそあなたが幸せになる番なんだから……」  二人は貢をこの先に行かせまいと道を塞ぐ。それは川のせせらぎが聞こえてくる方角だった。   「でも……加奈子さん、許してくれるの? 僕を許してくれるの?」 「当たり前じゃない、むしろ私があなたたちを邪魔してしまったのだから、私が謝るべきだわ」  貢の背後に白い光りが見える、振り返るとそれは眩しいくらいに明るい光だ。  そこから微かに声が聞こえる。それは決して失ってはいけない、自分にとっての一番大切な……。  二人は貢の背中をそっと押す。 「今度こそ、本当に誠さんと幸せになるんだぞ」 「お父さん……」 「帰りなさい……誠さんをよろしくね」 「加奈子さん……」  二人は満足しきった笑顔で貢に微笑むとすうっと消えていった。

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