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最終章 君の想いをきかせて 二十二

 少しむくれた先生に誠はまぁまぁと言った顔で頭を下げつつなだめた。 「我孫子の奴にも相談したら、一度あいつは死んだ方がいいって言うんだ。そうじゃないと、俺からも、俺自身もあいつと決別できないからってさ」 「我孫子が……?」  ためらいがちにお腹をさすると、服は新しく着替えさせられていて、お腹もなんともなく、手も綺麗だった。 「彼からの伝言だ。もうお前の前に二度と現れないと、さよならと伝えてくれって」 「そもそも、あなたが気絶したのは我孫子と接触した発作からなのよ、血のりをみてさらにそれが増幅されちゃったのね」  まったくと言った感じで先生はほっと胸に手を当てて深呼吸した。  自分にも荒療治だったかもしれないけれど、先生にもショックを与えてしまったと貢は申し訳なく感じた。 「誠さん……僕……お父さんと加奈子さんに会ったよ」 「えっ、まさか。……本当に?」 「もう、だからやりすぎだって言ったんです。危うく三途の川の先に送り出しちゃったかもしれないんですよ」 「ううん、大丈夫です、香澄先生、僕は二人には会えたけど、二人は絶対そうはさせなかったよ。道を二人でふさいで帰れって言ったもの」 「加奈子が?」 「お父さんも、加奈子さんも誠さんと幸せになれって……」  思い出しただけで貢は目頭が熱くなり、今にも泣きそうになった。  誠と香澄は驚いたが、それが本当であれなんであれ、貢の心の中の膿がとうとうすべて出し切れたことを悟った。 「加奈子さんが僕に誠さんと幸せになってって言ってくれたんだ。だからもう僕は加奈子さんの事恨んだりしないよ」  誠は貢の頭にそっと手を置きうなずいた。またこの丸い頭をなでられる事が素直に嬉しい。 「不思議なものだ。貢にはそんな話したことはなかったはずだが、確かに生前も似たようなことをあいつは言っていた」 「本当に?!」  もしかしたら本当に貢は向こうで父親と加奈子に会ったのかもしれない。

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