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最終章 君の想いをきかせて 二十三
一安心した香澄はコーヒーを買ってくると席を立った。
「誠さん、ありがとう。僕なんだかとっても今すっきりした気分なんだ」
「貢……怒ってないのか?」
「全然。むしろ僕にとって本当に荒療治だったらしい。ウジウジした気持ちが一辺で吹き飛ぶくらいに」
病室から見える窓の外を見ると空は朝よりもずっと晴れやかで、雲がひとつもなかった。
「誠さん、僕本当に死んでしまったかと思った。そしてその時に一番にあなたに会いたかった。僕にとってあなたは特別な人で心から愛している人です。これからはいままでの分ずっとずっと自分の心に正直にあなたと向き合いたいです」
「貢……」
まっすぐ見つめる自分への視線がいじらしくて可愛くて、誠は思わず目が潤んでしまった。
やっと貢の心が晴れたのだと確信すると、お互いにこの遠回りが無駄ではなかったと誠の中でもどこか昇華したような気持になった。
ただただ貢を抱き寄せたくて、彼を腕の中に引き寄せた。貢も素直に彼にしがみつくと背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめた。
「俺もだよ、これからはずっとお前だけを見つめて行く。心から誓うよ」
抱き合っている二人を病室の前で見た香澄ははたと足を止める。そして慌てて廊下の外に出た。思わず微笑むと、1つ自分の仕事が終わったと心から安堵した。
そしてそっと病室の入り口近くのイスの上に二本コーヒーを置いて、その場を後にした。
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