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第二章 講義 三

「まぁ、これはデザートみたいな味だからいいのだけど。流石に飽きてきたなー」  俺が苦笑するとエムルは『体の中に薬処方ボールを埋め込むよりはずっとよいはずです』と無表情で応えた。 『でも少し前はレモン味、その前はオレンジ味でしたから、そろそろ他の味覚に変えても良いですよ、今度はどんなお味になさいますか?』 「そうだな」  エムルの提案に俺はつい真剣になってしまった。  エムルは見てくれは赤毛で色白な美青年なのに残念ながら人間らしい表情の変化はあまりなく、こんなに美しいのだから少しは笑ってもいいのになと思うことがある。  けれどエムルは僕のプライベートでの警備もしてくれるし、ガードマンとしての能力もあるので、恐らくそれ以上のカスタマイズはやめたのだろう。  俺の医療費だけでも相当かかっているはずだ。  ふとルームで先ほどから流れている配信から臨時ニュースが入った。 _現在ノースエリアにて学生運動が盛んです。近頃はオメガ種の差別に対する是正を主張する学生たちが、連日サウスエリアにある国会議事堂の前で声高に主張を繰り返しています。運動の学生の中は三分の二がオメガ種の学生ですが、その他にもベータ種やアルファ種の学生も混じり、抗議をしています……最近、新しい犯罪として発覚された、隠れオ……_  いきなりエムルが目の前のテレビを消した。 「なんだよ、見てたのに」 『さ、もうそろそろ夕食の時間です、アヤトさま。鴨が焼きあがったらすぐに召し上がれますよ』

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