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第二章 講義 四
「アヤト、授業に遅れるぞ」
翌朝、玄関先に来た琉に促されて、俺はすこしだけだるい体を無理矢理にでも起こし、準備をはじめた。
やはり気温の上昇なのか今日も熱い。建物全体の空調がおかしいのかとも思ったが、琉は涼しげな顔で立っていた。
琉は長身で足も長いゆえに歩幅も広い。
いつから俺のなにもかもを抜かしていったのか。
子どもの頃はむしろ俺が琉をひっぱりまわしていた。琉は泣き虫だったし、いつも俺らにからんでくる奴らを矢面に立って琉を護っていた。
ケンカだって俺は誰よりも強かった。
アルファであることを誇りに思っていたから、決して負けることはなかった。相手が同じ種族でもだ。
寮の玄関先で琉がポストを素通りする。
俺は自分のポストを確認すると中に入っている数通の手紙を確認した。電子以外の紙のものも暮らしの中に入っている。
恐らく原始的な生活は贅沢なものの1つなのだろう。手紙を書く文化はアルファにのみ残っていた。
またか……。
俺は心の中でため息を漏らした。
琉のポストはいつものように何かしらの手紙がはみ出すように入っていて、もはや彼もそれを空けることをしない。
彼の個人用の医療兼、身の回りの世話をするアンドロイドに後で回収させるのだろう。
俺にくる手紙は常連に近いやつらからのものが多かったが、たまに別のクラスの知り合いでもない人間からのものも増えて来た。最近は特に酷い。
同じアルファの人間から言い寄られることがとても多くなった。
俺が少しウンザリした様子でポストに手を伸ばそうとすると、それを琉が遮った。
「お前のもそろそろ俺のアンドロイド、サエカに回収させよう」
「ああ、もうポストという制度を俺たちだけでもなしにしたいものだな」
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