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第二章 講義 七
その日俺は朝ベッドから起きなかった。
「どうしたアヤト? 授業がはじまるぞ」
いつものように迎えにきた琉が、今朝もやけに甘い低音ボイスで俺を起こしにくる。
そろそろこの習慣も終わりにするべきかなと思うことがある。
この声はいつか彼が本当に好きな相手に向けるべきモーニングコールであると思うからだ。
俺は口頭では伝えず、枕元にある腕時計型の携帯でわざわざメッセージを送った。
今日はだるいから、授業は出ない、欠席届けをしておいてくれと。
「……本当に具合が悪いのか?」
ドアの向こうから無駄に艶やかな声が響いてくる。
「そうだよ」
『いいえ、アヤトさまは今日もすこぶる元気です』
エムルが余計な口を挟む。
一瞬、ドアの向こうの琉は押し黙ったようだ。
「アヤト、お前の気持もわからなくないが、そう頑なになっても何も変わらないぞ」
俺の感情を察したのかいつもなら俺のこうした行動を無言で容認する琉だったが、今日は何故かいつもと風向きが違っていた。
「今日出席するオメガたちはちゃんと抑制剤を打ってきている。おかしな行動はしないはずだ。なぁ、彼らを一度でもいい。普通の人間として議論する機会を与えてやって欲しい。それにアヤト、お前の考え方は……」
そういいかけて口をつむぐ。
はぁ……わかったよ
拒絶する俺がなんだか子どもじみてる気がしてくる。
今時オメガ差別とは古臭いとでも言いだしそうだ。
「それにこの授業の単位を取らないと卒業に関わってくるぞ」
琉の一言で俺は思わず飛び起きた。
「……な、なんでだ?! そんな話聞いていないぞ」
「沼間教授が言ってなかったか?」
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