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第二章 講義 九

「真っ当なオメガは本当に真面目に生きていることをこの場で改めて伝えたい。僕らは法に従い、それぞれが自己管理をしっかりしています。かつての無秩序が心底許せないからです。発情期の時期については各自データをきちんと把握し、その時期にはみな制御の接種を義務付けられています。ですから、少なくとも中央都市大学付属高校に通う僕らは真剣に自分と向き合い生きています。しかし、近年、タチの悪い隠れオメガなるものが存在し、今はそれらが秩序を乱していると我々は考えております」 「隠れオメガ?」  思わず俺は声に出してしまった。  青年がこちらに気づき、俺に視線を合わせてきた。 「それは一体……」  俺は着ている服を正し、そいつの方に初めて体を向けた。 「ベータの居住する中央エリアに潜伏して、何食わぬ顔で生活している表向きベータの顔をしているオメガのことを言います。彼らのせいで秩序を守り、長い時間をかけて信頼を得た僕らの仲間たちは、社会的信用を失いつつある」  俺は初めてその言葉を聞いた。  それはなんでもオメガである自らを恥じ、薬でそれらを抑え込んで、ベータとして生きているというのだった。 「そんな馬鹿な話は聞いたことがない」  俺の言葉にその場にいるみんながざわついた。   「なんだ、アヤト知らないのか? ここ連日のニュースはそればかりだぞ」 「僕は知ってる、確か昨日か一昨日辺りにそんなニュースが流れたのを見た。なんでもそれに対する抗議デモが激化していて、時折国会前で機動隊と衝突を繰り返してるらしいぞ」 「そういう経緯があるから、今日の学生講義が開かれたんだろ?」  周りの声に俺は少しショックを受けた。  オメガと関わりたくないが故にいつもオメガ関連のニュースは検索避けしていたから、全くその情報を知らなかった。学校でその話題があったとしても、オメガというキーワードを自ら避けていたせいでわからなかった。

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