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第二章 講義 十

「そもそもアルファのみが統治している今のあり方に問題があるのかもしれません。それぞれの種族がそれぞれに国会に出てそれぞれを監視するのが一番理想だと……」 「そんな……ありえない」  俺は強く批判した。 「そしてこれはつい最近知った事ですが、隠れオメガはベータの種族だけでなく、アルファの種族の中にもアルファとして潜伏しているという話があります」  俺はその言葉で頭に血が登った。思わず立ち上がり、奴の近くへ歩いて行った。 「それではなにか? 君はアルファが統一しているこの世界に問題があるからそんな無秩序なことが起きているとでもいいたいのか」  俺は静かながら相手に怒りをぶつけた。 「これは我々アルファに対する侮辱だ。俺たちがオメガのそんな小細工に騙されるような間抜けとでもいいたいのか」  奴につかみかかろうとした時、咄嗟にそれを琉がとめる。 「アヤト、よせ!」 「隠れオメガか何か知らないが、こんな根拠もない情報に付き合わされてお前は頭にこないのか?」 「……」  琉が神妙に押し黙ってしまった。 「アヤト……お前、本当に知らないのか?」  俺は琉の顔を見て愕然としてしまった。  琉に同調するように周りの学生も俺を冷ややかな視線で見ているような気がして、俺はその場に立ち尽くす。

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