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第三章 隠れオメガ狩り 五
俺はどうして自分が拘束されているのかがまるで理解できなかった。
むしろこれは俺に対して失礼な行いをしているとすら思った。
警官が肩にしているバッジをみて俺は憤りを感じる。彼はベータの人間だったからだ。
俺の様子を見て何か悟ったらしい。それでも警察官は俺に媚びることなく、横柄な態度を止めようとしない。
「お前にとってアルファとはどんな存在だ?」
突然男が口角を上げて不躾な質問を投げかけてくる。どういう意味なのか混乱していて理解できない。
「なんだ。自分の置かれた状況を理解できてないようだな」
男が一歩進み出ようとした時、何者かが鉄のドアをノックした。大柄の男と対照的な木の枝のような細身の男が顔を出すと、なにやら男に耳打ちする。
「お前たちは何故俺を捕まえた? 俺が何をしたっていうんだ。それにお前は俺たちと違って身分が低いではないか。それなのにその態度はなんだ」
男は俺の前に立つとわざわざ俺を見下ろすような態度をした。何が面白いのか男の顔はニヤついている。
湯田……。俺は男の顔と名前を覚えた。必ずこの男を後で不敬に値する罪で訴えてやる。
俺は何もかもが気に入らなかった。生まれてこの方こんな風に雑に扱われたことなどない。
「お前自身は何も知らなかったようだな。お前が自分でしたことではなく、誰かにされてしまったことなら仕方ないのかもしれん。元凶はエムルにあるが、奴を捕まえないと事件が解決しない。だからこそお前を解放してやる。後は自分の目で真実を見てくるがいい」
エムルのことを責めている辺り、今この場にいないエムルは何かしらの形で彼らから逃げたのだろう。
さきほど来た奴らも覆面警察だったのだろう。
真実とか俺がしたわけではないとか、責められているのか同情されているのかわからない。けれど男たちの俺を見下げた視線が気に入らない。
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