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第三章 隠れオメガ狩り 六
飛空艇から学校の校庭に降ろされた時、辺りは不気味なほど静まり返っていた。気絶してから飛空艇にどれくらいいたのかわからない。
けれど周りはもう明るかった。
いつもと同じ景色のはずなのに、異世界にでも来たような気持になるのは先ほどの非現実的な出来事のせいなのかもしれない。
学校に着くとそこで見かけた時計が朝の9時を指していた。
通常なら学生たちがこの辺りをうろうろしている時間だ。俺は違和感を感じながら、とりあえずいつものように校舎の入り口まで向かった。
俺の下駄箱には寮と同じように手紙が溢れかえっている。いつもと同じのはずだ……。
中の室内履きをみたら斜めに押しつぶされそうに入っていて少し気分が悪くなった。
そのまま中身をゴミ箱にすべて放り投げたい衝動にかられたが、今はそれに構っている場合ではない。
(琉はどこに行ってしまったのだろう? エムルは?)
校舎に入ると、生徒たちの姿が見え、俺はほっとした。
少し神経質になっていたのだろうか。よく考えてみればいつも早めに教室に入るからぎりぎりの時間になって教室に入るなんてことは珍しいことだ。たったそれだけの事なのにこんなにも感じる雰囲気が違うなんて……と俺は苦笑いをした。
いつもの教室に入ると生徒たちが一斉に俺を見る。
「アヤト!」
「琉!」
俺が彼の姿に気づくと、彼は足早に俺のところに歩み寄ってきた。
彼がいることで心のどこかで思わずほっと一息つく。
「琉、一体さっきのはなんだったんだ? お前たちはどこに行ってたんだ。俺はあいつらに訳の分からないことを言われて混乱しているんだぞ」
「そうか……なんにしても無事で良かった……。心配したんだぞ、あれから、エムルは逃げて、俺たちだけ船外に放り投げられた」
「エムルはどこに行ったんだ……」
俺の疑問に琉は首を左右に振るだけだった。
「サエカもあれから見かけない、こちらから連絡しても応答がない……。恐らく彼女はエムルを探しているのだと思う」
一体エムルが何をしたって言うんだ。
状況が掴めないまま俺は正直困惑していた。
その日の講義は不思議だった。妙に周りが静かで、いつものようなざわめきがない。
俺が視線を向けると何故かみんな今まで俺を見ていたそぶりでさっと目を伏せる。なんだか気味が悪い。
教室を移動する時にその微妙な空気の正体がわかった。
人だかりのある電子掲示板に琉と差し掛かった時に、周りの連中が俺を一斉に見たのだ。
俺は苛立ち、人垣を押しのけ掲示板を見てやることにした。
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