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第三章 隠れオメガ狩り 八
沼間の部屋はデータベースに資料が沢山あるにも関わらず、手書きの文書も机の周りに堆く積まれていた。
恰幅のいい体を少し黄ばんだ白衣に包み、沼間はのっしのっしと部屋の奥を進んだ。
「話とはなんですか?」
「……うむ」
「あの掲示板の噂は本当なのか?」
わざとらしい質問に俺は少し苛立つ。
「俺っ、いえ、私に聞かれてもわかりません」
「今朝、わしのところにこんなものが添付されてきた」
ふと差し出された資料を見ると、それは俺の名前が冒頭に書かれてあり、その後に細かく俺のDNAを分析したらしきデータがつらつらと書かれてあった。
「あまりにももっともらしい資料なのでな。学校としても今一度お前のDNAを調べてみる必要があると思ってな、申し訳ないが君の髪の毛を採取して調べさせてもらった」
「な……!」
そこには俺がオメガであるという最終結果が出ていた。
俺はわけがわからなかった。
「こんなものは嘘です……俺はずっと最先端の医療ロボットと共に健康管理をされながら過ごしてきました。もちろん常にDNAの検査はされていたはずです」
「エムル……だろう? わしはその医療ロボットはお前の両親が国からの援助金で海外から取り寄せたものだと聞いたことがあるが……。そのお前の両親が今Order Police Corpsに手配されていることは知っているな」
「……」
「私は何もお前の両親がお前の属性を偽っていたということに対して大きな罪は感じていない。昔と違い、今は抑制薬もかなりいいものがある。自分の子供がオメガであることを認めたくなくて、アルファであることを偽る両親がいることも。それが証拠にOrder Police Corpsもお前自身を責めたりはしていないはずだ。お前の両親が罪を犯したとしてもお前が率先して罪を犯したわけではないからなぁ」
「待ってください……」
嘘だ。なんだこれは。現実なのか?
俺は目の前の床がぐにゃりと曲がるようなそんな強い眩暈を感じた。
何かが胃から込み上げてくるようだ。
ダメだ……。このままでは倒れてしまいそうだ。
「来年度の学生募集要項の大きな変更があったのは知っているか? 優秀であればオメガの学生もこの先の大学に入ることができるようになる。まぁまだ限られた人間だけではあるがな。私はな、お前がオメガだったとしても秀でていることに変わりはないと思っている。以前から話していただろう? お前の努力次第では助手してもいいという話を……」
「待ってください。どうして私がオメガであるということを前提に話を進めているのですか? 違うかもしれないじゃないですか?」
俺が目の前が真っ白になりながらも沼間教授に訴えようとしたが、背後に昨日現れたOrder Police Corpsの人間が二人現れて、そのまま言葉が詰まってしまった。
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